カレン州(カイン州)(Kayin)のオウゴンオニについて、有名ショップ様(複数)では、ババ(
ssp.babai)として販売しておられる。タニンダーリ管区(Tanintharyi)とカレン州そしてタイ・カンチャナブリ県(Kanchanaburi)の採集地は同一の山塊にあり、半径約50㎞(直径100㎞)の範囲内におさまるということを根拠とされているようだ。この見解に従えば、タイ・カンチャナブリ県のオウゴンオニもババということになる。確かになるほどと思えるところもある。
ただ一方で、馬場勝氏は、そもそも記載には誤りがあって、タニンダーリ管区で採れるオウゴンオニが全てババなわけではなく、沿岸部の特定地域のもののみがババだとされている。同じタニンダーリ管区でもタイの国境地帯のビラウタウ山脈で採集された個体については、馬場氏ご自身がババではないと判断しておられる(記載に基づけばババになるであろう)。タイの
ヤーラ県(Yara)の個体についても同様のご見解のようである。
(以上、KUWATA No.24 p28~参照)。
さらに、BE KUWA では、ビラウタウ山脈のタイ側であるカンチャナブリ県の個体とそれより南方のヤーラ県の個体は、モセリに分類されている。
(以上、BE KUWA No.14 p14参照)
ところで、私がブリードしたカンチャナブリ産のWF1♂個体群だが、2血統とも大顎先端の上下二又部分の下が長い・龍骨部が外向きになるというババの特徴2点については全ての個体が備えていた。一方、ババの重要な特徴のひとつである光沢については、正直かなり個体差があるように感じた。特に裏面(下面)は顕著であった。上翅の黒帯についても同様であった(ババは太くて境界が明確とされる)。一見してモセリとは異なると判断できるほどではなかった。そのほかの点については、現在ババを所有しておらず比較できないため、何とも言えない。
(以上、BE KUWA No.14 p15参照)
そのようなわけで、アマチュアブリーダーである私としては、タイ及びミャンマーの新産地オウゴンオニとババとの関係は「判らない」とするしかない。個人的な見解としては、私はババの記載そのものに懐疑的なのだが、それは置いておくとしよう。当ブログではしばらくはミャンマー・カリン州、タイ・ヤーラ県、タイ・カンチャナブリ県のオウゴンオニを全て、
Allotopus moellenkampi ssp
で通そうと思うので、ご了解いただきたい。
幸い3産地のオウゴンオニ全てを入手できたので、なるべく多く次世代の♂を得て、比較検証してみたいと思う。